2022.03.11
俺はここで農業を極めたい
福原良治さん(62歳)

棚田キャンプで実際にキャンプをしたり焚き火をする田んぼは、生産者さんが代々守り続けてきた田んぼです。その田んぼで米作りを行うのは地元生産者の福原良治さん(以下、良治さん)。棚田キャンプの絶景は一筋縄では出来上がりません。今回は「この地で農業を極める男」こと福原良治さんをご紹介します。この棚田でどんな歴史や思いが繋がれてきたのか、お話をお聞きしました。

農家もどんどん減っている

良治さんは、宮崎県内の農業高校に進学し、卒業してからずっとこの地で農業に携わって来ました。元々福原家は江戸時代に旧内藤藩(現延岡市あたり)が福島県からご先祖を連れこられこの地に居を構えたそうです。そして、良治さんの曽祖父のおじいさんの時代から規模も大きくなり今に繋がっています。現在は、大根や白菜などの露地野菜や、高千穂牛を飼育する畜産業をしながら生計を立てています。

「これからは農家がどんどん減っていくばい」

インタビューの冒頭、良治さんはそうおっしゃいました。良治さんが就農した時代は、長男が農業を継ぐもので、家業を継いで生活するのが普通でした。しかし、時代の流れや生活スタイルの変化により就農者は減り、離農者は増え、高千穂町でも農業従事者は年々減少しています。しかし、話を聞いていくと良治さんはここで農業を続けて行くんだ、地域を盛り上げていくんだ、という強い意思を持っていらっしゃいました。

いつも見ている風景を守りたい

良治さんが農業を行い、棚田キャンプでお借りする田んぼは「尾戸(おど)の口の棚田」という棚田の中にあります。この棚田は日本棚田100選にも選ばれている棚田で、美しい風景が広がり美味しいお米を食べる事ができます。しかし、ここで満足に米作りができるようになったのは、江戸時代の終わりから明治の始まり頃にかけて、この地域の先人たちが苦労して作り上げた用水路のおかげなのです。

高千穂町は、山の中腹に集落や農地があり、農地に水を引くための川は崖を下った先にあります。このため以前は水資源が多くはなく、稗や粟などの雑穀をよく育てていました。しかし、米作りへの夢を諦めきれない先人たちは、こう考えました。

「集落より標高の高い川から水路をつくり、水路に傾斜をつけて集落まで水を運べばよいのではないか」

その計画には延べ人数2万7千人もの人たちが関わり、掘削する機械などなく手作業で山間に水路やトンネルを掘り進め、約6年かけ用水路を作り上げました。この用水路ができたことで棚田を潤すことができるようになったのです。良治さんの農地も用水路の整備や、基盤整備、農業の機械化など条件整備を行い、少しずつ面積の拡大を行い今では町内随一の大きな農家になりました。その田畑は良治さんの時代も耕作放棄地を出さず絶えず守っています。

「先人たちが作り上げた農地を守って行きたい」

元々この尾戸の口の棚田がある集落は、川をはさんだ対岸に住んでいたリーダー的存在の方が開拓され集落を作られたそうです。現在でも、その方のお墓が良治さんの家のお墓の近くにあり、家のお墓を参る時は、その方のお墓にお参りしたあと!と代々言われているそうです。

そういった所からも先人たちに感謝の気持ちを忘れない姿がうかがえます。先人たちが切り拓いてきた農地だからこそ、守っていきたいと語る良治さん。そこには守るだけでなく、これからのために何をするべきかを考える思いもあります。

この田んぼがそんなにいいのだろうか?

当初、棚田キャンプをさせてほしいと声をかけた時、「確かに眺めはいいが、この変哲もない田んぼで喜んでくるのだろうか」と思っていたそうです。そんな不安を抱えながら、一度この棚田でキャンプをしてみると一転。棚田でのキャンプファイヤー、お酒を飲みながらの交流、見慣れた田んぼが普段と違う表情でとても楽しいものだったそうです。

「いつも見慣れた景色だが、知らない人たちと焚き火をしながら、お酒を飲むのがこんなに楽しいと思わなかった。始めはよくわかってなかったけど、自分たちの村が良いところだと逆に教わった。本当いろんな人に遊びにきてほしいね」

見慣れた景色に思わず感動した棚田キャンプ。いろんな視点で集落のためにできることをやってみるものだと良治さんは話します。

ここで農業の道を極めていく

就農当時は農業以外にしたいことはなかったですか?との質問をすると、「そりゃー農業しなくていいならそっちに行ってたよ」との回答(笑)。しかし、農業高校に進学して、農業を継いだ時、おじいさんがとても喜んでくれたことを今でも思い出すそうです。もちろん若い頃は農業以外の道を考えることもありましたが、今はこの地で農業を極めたいと良治さんは話します。

「先人たちが守ってきた農地を守っていきたいこともあるが、一番は美味しい野菜を作って出荷して食べてもらいたいね。ここで農業を極めたい」

現在62歳の良治さん。後継者の息子さんと一緒にこれから地域農業を盛り上げて農業の極めていくことでしょう。良二さんの農業列伝はぜひ棚田キャンプで焚き火を囲みながら聞いてみてください。

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